とうとう夏になってしまった。一年のうちでオレがもっとも嫌いな季節。ランボー地獄の季節也。夏で唯一いいのは「何もしなくても痩せられる」ことぐらいか。ひと夏が終るころになるとオレのダブついた腹回りがスッキリと凹むからアラ不思議ちゃん。そして、一年かけてまたゆっくりゆっくりと腹回りに脂肪が蓄積されてゆくのだ。森羅万象、うまく出来ている。
そうだ、宝くじを買った。貧乏人のクソ夏の楽しみなんてこれくらいしかない。サマージャンボ。いや、正確に言えばサマージャンボ「ミニ」。正規(?)のサマージャンボに比べると一等の賞金が低い分当たりの本数が多いってやつ。金額よりも「確立」が少しでも高いほうを選ぶあたりが貧乏人特有のセコさだろうか。こんなところでもオレという人間の器の小ささを露呈。こんな奴が“大成”するハズがない。エヘヘヘ。
さて、久々にオレの写真ギャラリーを更新したので、おヒマなら覗いていっていただきたい。▼こちらから・・・
が、ここで深刻な問題が発生!!なんともオレの愛用していた白黒フィルムがとうとう製造中止になってしまったのだ。フジフィルムのネオパン400ってやつ。けっこう前に既にメーカーでは製造を打ち切っていたようなのだが、オレはつい先日、ビックカメラの店員から初めてその話を聞きショックを受けたのだった。昔は1600なんていう超高感度フィルムもあって、わざと粒子を荒くしたいがためにまっ昼間っから1600を使って少しでもわが師、森山大道に近づこうとイキがっていたもんだが、とうとう400もなくなりフジが作ってる白黒フィルムは感度100のアクロスってやつだけになってしまった。しょーがねぇーなーフジフィルム。化粧品なんか作ってる場合かよ?いや、フィルムじゃやってゆけないから化粧品なんか作ってるわけですよ。幸い海外のメーカーではまだ感度400の白黒フィルムも作っているようなので、今後はそっちを使うしかない。フジのフィルムが一番安くて画質もなかなかで気に入っていたのだが、なんとも痛い。なんでもデジタルデジタルデジタル馬鹿の現代。オレのような旧石器時代の生き残りのような超アナログ人間には全く生きづらい時代である。カセットテープしかり、レコードしかり、みんなしぶとく生き残ってるのに、フィルムはそう遠くない将来完全に消滅してしまうのだろうか?
去年の冬、たまたまネットで目にしてそのデザインに惚れ込んで手に入れた旧ソ連製フィルム式カメラ「スメナ8M」がきっかけになり、約20年近ぶりくらいに再びオレの写真熱が再燃し始めた矢先のフィルム製造中止のニュースは、なんとも皮肉というか、なんとも切ない気持ちにさせられたのだった。
写真なんかにこれっぽっちも興味がなかったオレが写真というものに初めて衝撃を受けたのは、東京に出て来てから間もなくの頃、何かの本でたまたま眼にした森山大道だの中平卓馬だのといったアノ時代の偉大な、今も個人的に敬愛して止まない先達たちの強烈なモノクロ写真群だった。すっかりオレは打ちのめされて見様見真似で写真を撮り始めたのだった。最初はバカチョンカメラで撮っていたのだが、すぐに飽き足りなくなり中古の激安の一眼レフを買った。スキマから光が漏れるようなオンボロの一眼だったので、仕方ないので黒のビニールテープでスキマをマスキングして使っていた。その当時からすでにフィルムは白黒オンリーだった。高校の修学旅行の時以来、カラーフィルムは使ったことがない。そのくらい、先達らのモノクロ写真がオレに与えた衝撃というかインパクトは大きかった。この先も一生カラーフィルムを使うことはないだろう。
その後、オレの写真熱はエスカレートしていって、とうとうフィルムの現像からプリントまで自分でやるようになった。自宅にしつらえた暗室・・・といっても6畳の一間のオンボロアパートの雨戸を閉め切っての即席の「暗室」だったが・・・。真っ暗な部屋の中、赤い裸電球の光だけを頼りに夏なんか汗だくになって酸っぱい現像液の匂いにむせながら自分で撮った「作品」をプリントしては一人悦に入っていた。今から15,6年前の話。
ところが、そこまで写真にのめり込んでいたのにオレの写真熱はその後わずか2,3年でパタリと止まってしまった。その理由が今となっては全く思い出せないのだが、初めてバンド(ダンボール・バット)のCDを出した時期(‘97年)と重なることから、多分にオレの興味が写真から音楽(バンド)へ大きくシフトしてしまったのだろう、と思う。
今も続く有名な某写真コンテストに当時一度だけ応募した記憶がある。まあ、アマチュアの域を出ていないオレのひとりよがりの写真なぞ、当然、一次審査であえなくゴミ箱行きだった。審査員を恨んだが(笑)、当たり前の結果だった。たしか当時、ヒロミックスがその某写真展で賞をとって世間で注目され始めていた頃で、あんな写真のどこがいいんだかさっぱりわかんねぇよ、と、友人に毒づいて独り悶々としていたのを思い出す。今も昔も変わってねぇな、オレ。
つい先日、電車に乗っていたら途中の駅でカメラをぶら下げたニイチャンが飛び乗ってきて、あやうくオレとぶつかりそうになった。エグザイルとかに混ざっててもおかしくないようなヒゲ面のちょっとイケメン風ニイちゃん推定28歳で、そいつがこれ見よがしにぶら下げているカメラは、先っちょに望遠レンズ(?)が取り付けてあるようなゴッツイ見るからに高そうなデジカメだった。雑誌かなんかのカメラマンなのか?その時、オレのバッグの中には愛用の旧ソ連製カメラ「スメナ8M」が息を潜めて隠れていた。なぜか、ふと「破壊せよ、とアイラーは言った」という中上健次の本のタイトルが頭を過ぎり、思わずそのニイちゃんのぶら下げているカメラをぶんどって電車の床に叩きつけ粉々に破壊している図をオレは妄想したのだった。「高いんだろ?ニイチャンのそのカメラ?」「なんならオレのこのカメラもぶっ壊してもいいよ。これ、旧ソ連製なんだけどね、ヤフオク見れば中古で2000円ぐらいでゴロゴロ売ってるんだけどね。まあ、オモチャというか、ニイチャンのカメラに比べたらゴミみたいなもんだけどね」「それにしても、そんな高そうなカメラでいったいどんな凄いの撮ってるの?」「どうせ、モデルの女とか騙してブイブイいわしてるんでしょう?羨ましいなあ、エヘヘヘ・・・」
フェイスブックには様々な趣味趣向を同じくする人間が集い語らう「グループ」というものがある。映画好きが集まるグループやらロック好きが集まるグループやらラーメン好きが集まるグループやらエトセトラ。そんな中にモノクロの写真にこだわり自分で撮ったモノクロ写真を投稿しお互いの作品を鑑賞しあうというグループを見つけたのだ。オレも興味本位で先日そのグループに参加の「申請」を出し、めでたくグループの一員になったのだが、そのページを見ているうちにだんだんと救いようのない虚無感に襲われ、いたたまれなくなり、わずか3日ほどでグループを脱退してしまったのだった。まるで、どれもこれも大便をした後の尻をハンカチかなんかで拭いてるような、もったいぶった、お上品でアート気取りのこそばゆくなるような「作品」ばかりが競うように次々と投稿され、それをグループの参加者同士が誉めあう、つまり互いの尻をさらにハンカチで拭きっこしているような薄ら寒い世界が繰り広げられていたのである。何が楽しいのだろうか、あの手の連中は?何を自慢したいのだろうか?「空っぽ」な作品がまるで下水のようにページの上から下へとどんどん流れていく。さぞかし高いカメラを使っているのだろう。オレの2000円のカメラで撮った貧乏臭い場末の写真などの出る幕はないようだった。
ウンコした後の尻を新聞紙で、葉っぱで、素手で拭いているような、肛門のシワに、理性のシワに、網膜のシワに、ヒリヒリと訴えかけてくるような写真がオレは好きだし、そういう写真を撮ってる写真家が好き出し、そういう写真を自分もいつか撮れたらとただ願うのみ。
ハンカチを捨てよ、街に出よう。
★今夜のBGM★
エジプト人はモロヘイヤ喰ってピラミッドをオッ建てたっていうからね。みんなもモロヘイヤ喰ってジョナサン・リッチマン聴いて夏を乗り切ろう。
♪「エジプシャン・レゲエ」/ジョナサン・リッチマン
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解説:岡村詩野(音楽評論家)/
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