2013年12月9日月曜日

被写界深度ゼロ!とウワゴトを言いながらKGBに連行された惑星ソラリスの夜。

 

              (▲イヴェント詳細はブログの下です) 


 なんにも写っていなかったらどうしよう、と思っていたんです、正直。真っ黒か、真っ白か、はたまたボケボケか。どうせオモチャみたいなカメラだもん。ドキドキしながら近所のDPE屋に現像とプリントを頼んでいた問題の写真が出来てきました。カラーフィルムならすぐに仕上がるところが白黒フィルムだと10日もかかるんだとか。気を持たせやがって。こんなにかかるんなら昔やってたみたいに現像ぐらいはまた自分でやるか、酸っぱい現像液にまみれながら。で、結果は気が抜けるくらいにちゃんと写っていました(本ブログ内の写真がそれです)。とくにピンボケもなく。なんだ、意外とまともなんだなコイツっていう印象。チョット前に古本屋でたまたま手にして購入した写真家・アラーキーの著作本を読み感化されまた何十年ぶりかで写真を撮ってみようかと思い立ち安いデジカメでも・・・と、カタログやネットなどでいろいろ吟味したりビックカメラの店内を物色したりさんざん迷った挙句、やっぱりオレは根っからの旧石器時代の人間なんでしょう、あの液晶画面観ながらパシャっていう感覚がイヤで、撮ったものがその場ですぐに確認できちゃって要らなきゃその場で即「消去」っていう潔(いさぎ)悪さがイヤで、誰でもプロ並みのきれいな写真が買ったその日から撮れますっていう有難迷惑な無駄な機能満載なのがイヤで、その他モロモロのことがイヤで、取り扱いの不便さ不自由さ融通の利かなさ等々それらもひっくるめて楽しんでこそが「写真の道」ではなかろうか、と、なんだか分かったような口ぶりで、あえて時代に逆行、偏屈ジジイの酔狂な心持よろしくフィルム式のカメラを買ってしまいました。それも冒頭に書いたようにまるでオモチャのようなカメラ。「のような」ではなく完全にオモチャでしょう、コレ。いや、見てくれはオモチャですが実は本体価格に不釣合いな高性能なレンズが搭載されているっていうのがもっぱらのウワサ。出来上がってきたプリントを見れば、そんなウワサもあながちウソでもないのかもって気にさせられたり・・・。
 
 で、そのカメラとは、先日ヤフオクで3千5百円ポッキリで落とした旧ソ連製(!)の「スメナ8M」なるカメラでございます(右の写真)。オマケで専用の皮製ケースとゴッツい外付け用のフラッシュが付いていこの値段(もちろん中古)。なぜこのカメラに辿り着いたのかはたまたまの偶然としか言いようがありません。その存在すら知らなかったのですが、なんでも昨今は婦女子を中心にデジタル、アナログ(フィルム)を問わずいわゆるオモチャのカメラ・・・「トイ・カメラ」がブームなんだそうで、その“トイ・カメラ・ブームの先鞭を付けたマシン”として本機のことがあるサイトで紹介されていました。実際、相当の数の本機(数種類の色違い有り)が現在日本国内(世界に?)に流通している模様。1970年頃から1993年頃までソ連(ロシア)のLOMO社というメーカーが量産していたんだとか。作ってる当のメーカーにしてみれば「トイ・カメラ」なんていう意識は当然これっぽちもなかったハズでしょうが、どこにも目ざとい輩がいるもので、世のトイ・カメラブームの到来を予見してか、ロシアの倉庫に大量に眠っていたデッド・ストック(売れ残り)のコイツを恐らく叩き値同然で買い漁ってきてはデジカメなんてカッコ悪いじゃんやっぱフィルムでしょフィルムしかもこのオシャレなデザイン見てよ・・・と、自称プチ・アーチストを気取ってみたいサブカルにも片足突っ込んでますけどオシャレにも気を遣ってます的シモキタとかダイカンヤマとかうろついてそうな女・子供どもの興味を煽っては売り飛ばしボロ儲けした由。
 とにかくオレはそんなこのカメラについてのあーだこーだという背景や能書きのことなどつゆ知らず、たまたまネットで見かけたその衝撃のルックスとソ連製というどこか秘密めいたそれでいて胡散臭い血統に惹かれ即一目ぼれ。おまけに値段もリーズナブルと来た日にゃその瞬間にデジカメのことなんて頭ん中から完全にふっ飛んだのでした。オール・プラスチック製の鼻息でも飛びそうな軽く華奢なボディに薄いアルミ板が取り付けてありそこにロゴマークと機種名。絞りやシャッタースピードは「一応」変えられるフル・マニュアル仕様ですがファインダーはただ透明なプラスティック板がハメてあるだけの飾り窓のようなもんで覗きながらレンズをクルクル回しても何も変わりません。ゆえにピントは目測。つまり撮影したい物体までの距離を頭で割り出し自分の勘(!)のみでシャッターを切るわけです(野生の勘が物を言う!)。しかも、シャッターは切る前に一度レンズ横のレバー(チャージレバーという)を下に下げておいてからでないと切れない仕組み。そのレバーもカメラ本体の持ち方によってはシャッターを切る際に指に引っ掛かってシャッターを切り損ねたり・・・。さらに、うっかり1枚撮り終わった後フィルムを巻き上げるのを忘れてもう一度シャッターを切ってしまうと合成写真のような二重写し(▲上の馬の写真がソレ)になってしまう(これはこれで面白いが)、などなど、とにかく機動性、確実性、利便性の全てが欠落した非常にローテクなマシンなのですが、けっこういい加減な設定でもそれなりに撮れているのがなんとも不思議(逆にうっかり操作によるハプニング写真が面白かったりもするのですが・・・)。さすが悪名高きかのKGBも使っていたという名器・・・・って、いや、使ってねぇーでしょう、いくらなんでも(笑)。でも、ゴダールの傑作SF映画「アルファヴィル」に出てきた探偵のレミー・コーションとかこんなカメラ使ってなかったっけ?ちなみに、フィルムの感度なんかも「一応」設定できるのですがISO(ASA)250までしかの表示がありません。しかし、そのへんもアバウトらしくて今回はISO250のままフジの白黒フィルム「ネオパン400」(ISO400)をぶっコンで撮ってみたものの全く問題はナシ。よし、感覚はなんとなく掴めた。コイツに白黒フィルムどんどんぶっコンでサハリンでもウラジオストックでも行ったるでぇ、と、早くも司馬遼太郎の「街道を行く」か?オマエは。いやいやまじめな話、このカメラ一丁ぶら下げて本当にロシアに乗り込んでみたくなってきましたぜ。
ところで、カラー写真は撮りません、ボク。昔からモノクロ・オンリー。それは間違いなく20代の頃に出合った森山大道の一連のモノクロ写真から受けた衝撃がトラウマになっているんでしょう。以降、写真と言えば見るのも撮るもの「モノクロ」です。凶悪なまでにブレててボケててコピー機から吐き出されて来たようなハイ・コントラストのガサガサに粒子の荒れた一連の氏の写真は、とにかくオレに強烈なインパクトを与えたのです。それがきっかけで当時、オンボロの中古の一眼レフを買って(隙間から光が漏れるんで黒のビニールテープをボディに貼っていた!)モノクロ写真ばっか撮ってはすっかり気分だけはDAIDO MORIYAMAってな感じで自分で現像からプリントまでやったもんです。しかもわざと荒れた写真にしたくって真っ昼間だっつうのに超高感度のISO1600のフィルムとか使ったり現像液の温度を高くしたり現像タンクをグシャグシャとかき回したりして・・・。まあ、若気の至りというかただの馬鹿だったんですね。
 あとこれは最近知ったのですが、デジカメで撮る白黒写真って、アレは「ウソっぱち」らしいんです。ウソっぱちっていうのは、一旦はカラーで撮ってデータ化したものをカメラん中で無理矢理にデジタル回路が必死こいて白黒に「変換」してるそうな。最初から白黒で撮っていたつもりが実際は機械がテキトーに「ハイ、白黒で撮れました」って誤魔化してるらしいです。よく分かりませんけど。いずれにせよその時点でアウトでしょう。ア・ウ・ト!!こっちは白黒で撮るで~って身も心も白黒モードで気構えてんのに肝心の機械のほうはシレ~っとカラーで撮っているってわけです。なんか小馬鹿にされてるような気分ネ。この話を聴いて余計イヤになりました姑息なデジタルカメラが。それに比べりゃフィルムは潔い。裏表なし。始めっから白黒は白黒。白黒にしか写らない。それが当たり前、それが写真の心、それが物事の原則。
 
 さて、話が長くなりましたがこのスメナ8Mという奴。何気に本体の底側を見てみればシリアルナンバーが刻まれておりなんとも気になりネットでいろいろ調べてみれば、頭の数字2ケタがどうやら作られた年度を表しているとかいないとか。すると、こいつには91と刻まれているから1991年製となり・・・あん?なんと91年と言えば言わずもがソビエト連邦が崩壊しロシア連邦が誕生したまさに動乱の年!そんな動乱の最中に作られたものの当然のように売れ残りデッドストックとなり世間の騒乱を尻目に薄暗い倉庫の片隅で眠っていたコイツが極東の海を渡り回り巡って今こうしてオレの手の中にある・・・などと想いを馳せてみれば時空を越えたなにやら運命めいた出会いを感じたりもしないでもありません。そして、とにかくこのデザイン。簡素でありながら社会主義国独特の厳格な思想が詰まっていそうな冷徹な面構えは実にモダンでさえあります。反面、どこか憎めない間抜けさが漂うのも魅力的なすっとこどっこい赤の広場。そして、コイツで撮った写真までもがタルコフスキーかなんかの映画の一場面を切り抜いて来たかのような風合いと郷愁が漂って見えてくるのは単なる気のせい?
 いずれにせよ、どうやら今夜は、安いキャビアを肴に薄いウォッカを舐めながらスターリンに、レーニンに思いを馳せる夜。ハラショー!エリツィン、ハラショー!ゴルバチョフ。そして、夜霧に煙る首都高をぶっ飛ばし、今宵「惑星ソラリス」へと旅立ちます、このオモチャと一緒に。ほら、オレの目はもうすでに被写界深度ゼロ、ゼロ、ゼロ・・・

SMENA-8M(ソ連、LOMO社製 シリアルNo.91200006
レンズシャッター:マニュアル
レンズ:T-43 40mm F4.0
重さ約220
シャッターSP:バルブ、153060125250分の一秒
絞り:F416
ピント:目測式



★「今夜のBGM」は下記イヴェント情報の下です。


------------------------------------------------------------------------
★追伸:
やります!!雑誌「トラッシュ・アップ!!」屑山編集長とオレによる、お互いで持ち寄ったヘンなレコードをかけながらぐだぐだ語り合う異色トークショーの第2弾!!イヴェント中に、オレのソロ「ネオン警察」のミニ・ライヴコーナーもご用意。ピアノ担当のMARI(最近は古墳好きの「まりこふん」って名前の方が有名!!)も駆けつけてくれます。今回も、またまた珍グラム、珍ニューウェイヴ、珍歌謡曲なレコードが入荷しておりますので是非お楽しみに!!前売はありません。当日券のみで、ドリンクが1杯付いて1500円!!損はさせません。よろしく~。


次回トークショー情報!!
12月18日(水)@高円寺CDショップ「円盤」
http://enban.web.fc2.com/
【今夜は御意見無用~第2回~】
結成26周年を誇る流浪の無国籍ROCKバンド「ダンボール・バット」のリーダーAMIと、日本のトラッシュ・カルチャーをリードする雑誌「TRASH-UP!!」編集長の屑山屑男の両盟友による、主に70年代~80年代にかけての時代のすき間に埋もれたロック、ニューウェイヴ、歌謡曲などのニッチな裏名盤レコード鑑賞と、噛み合わぬトークで御意見無用の一夜を。また、AMIの闇のソロユニット「ネオン警察」の即興ミニライヴもご用意でさらに御意見無用!!

★出演:AMI(ダンボール・バット/ネオン警察)、屑山屑男(雑誌「TRASH-UP!!」編集長)、MARI(ネオン警察ピアノ担当 from BLACK&BLUE)

★PM7:30OPEN / PM8:00START PM10:00END
★当日券のみ 1DRINK付き¥1500


次回「ダンボール・バット」ライヴ情報

1月18日(土)@東高円寺「UFO-CLUB」
http://www.ufoclub.jp/
雑誌「TRASH-UP!!」&ダンボール・バット共同企画
【ニューウェイヴ天下御免VOL.6】
UFO-CLUB開店18周年記念スペシャル!!
※DJ:屑山屑男(TRASH-UP!!編集長)

※出演:
ダンボール・バット、ヰタ・セクスアリ、他全4組を予定
出演者決まり次第順次更新します

PM18:30 OPEN /PM19:00 DJ START /PM19:20 BAND LIVE START
PM10:30 END
前売¥2000 当日¥2300 +それぞれ要DRINK代¥500


------------------------------------------------------------------------

★今夜のBGM★
まさかこの曲のPVが存在していたとは!!先日こいつを発見して失禁尿漏れ。ロキシーミュージックなんかの系譜にも入れられるモンダン・ポップな名グループ「メトロ」の名盤1stからのシングルカット大名曲(アルバムヴァージョンはもっと長いです)。こんなデカダンなPV見せられた日にゃデヴィッド・ボウイも嫉妬するわいな、と、案の定、後にボウイは自身のアルバム「レッツ・ダンス」の中で本曲をリメイクカヴァーしている。歌詞の内容もかなり倒錯的な世界どす。
♪CRIMINAL WORLD / METRO('76)


------------------------------------------------------------------------

【お知らせ】
ダンボール・バットでは女性キーボード奏者急募中(サポートOK)!
お気軽にお問い合わせください。
こちらから▼
http://www.formzu.net/fgen.ex?ID=P39590588


------------------------------------------------------------------------

▼リーダーAMIのソロユニット「ネオン警察」1stCD「空間の犯罪」発売告知PV
▼アマゾン
http://www.amazon.co.jp/dp/B00DBEFLVK/
▼ディスクユニオン
ttp://diskunion.net/portal/ct/detail/IND12849

2013年7月27日発売/全10曲(42分)/¥1200+税/歌詞付/
CD「帯」推薦文:直枝政広(カーネーション)
解説:岡村詩野(音楽評論家)/
ライナー寄書き:蔦木俊二(突然段ボール)、
屑山屑男(「TRASH-UP!!」編集長)
ジャケット写真:AMI/デザイン協力:嶋田真由美(「TRASH-UP!!」デザイン室))






◆ダンボール・バットでは、イヴェントへの出演依頼随時募集中。お問い合わせはこちらから
◆ダンボール・バット公式サイト
http://danballbat.cside.com/


----------------------------------------------------------------------------------


▼ダンボール・バットNEW ALBUM告知CM
 
▲『馬鹿ヌーヴェルヴァーグ』  ▲品番:TSR69002/発売:東京産業レコード ▲2012年1月31日発売▲全11曲(約42分)収録 ▲録音・ミックス・プロデュース・作詞作曲:AMI▲W見開き紙ジャケ仕様/歌詞カード付▲CD帯コピー文:ROLLY(ローリー) ▲ジャケット写真&デザイン:常盤響▲ライナー:岡村詩野&湯浅学 ▲寄書き:白井良明(ムーンライダーズ)&サミー前田▲ゲスト・シンガー:ジョン<犬>&イライザ・ロイヤル(エコダムド/ex穴奴隷) ▲サポート・コーラス:MARI(BLACK&BLUE) <以上・敬称略> ▲収録曲 「馬鹿ヌーヴェルヴァーグ」「ドライ・フルーツ、ドライ・サン」「ファッション革命」「滿民の敵」「シュトラウスは夜に殺せ」「アポカリプス・ドゥ・オア・ダイ」「狩人だから」、他全11曲 ▼下記各オンラインショップにて販売中! [AMAZON][TOWER RECORDS][DISK UNION][楽天ブックス] ※ディスク・ユニオン(インディーズ・コーナー)、タワーレコード新宿店、タコシェ(中野ブロードウェイ内)等の店頭でも販売中。  ----------------------------------------------------------------------------------  ■「馬鹿ヌーヴェルヴァーグ」全曲高音質ダウンロード販売開始!特集記事も読めます。こちらから!(提供:OTOTOY) http://ototoy.jp/feature/index.php/20120326  --------------------------------------------------------------------
▼DANBALL BAT最新PV▼   「ドライ・フルーツ、ドライ・サン」/ダンボール・バット(アルバム「馬鹿ヌーヴェルヴァーグ」より)    ▼DANBALL BAT最新PV▼  「アポカリプス・ドゥ・オア・ダイ」/ダンボール・バットfeat. イライザ・ロイヤル(アルバム「馬鹿ヌーヴェルヴァーグ」より)    ▼DANBALL BAT最新PV▼ 「シュトラウスは夜に殺せ」/ダンボール・バット(アルバム「馬鹿ヌーヴェルヴァーグ」より)  
 
  

0 件のコメント:

コメントを投稿